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土壌病

 土壌病とは、土壌中に存在する病原体が感染して発症する疾病の総称で、通常は病原性有芽胞性菌により汚染した土壌を介して発病する場合を言います。
 芽胞は抵抗力が強く、土壌中で長年にわたり生存して感染源となり、このような病気が一度発生すると、その地域は常在地になりやすいと言われています。
 土壌病の代表的なものに炭疽と破傷風があります。この二つの病気は共に人獣共通感染症で、主に畜産の世界で大きな問題となりますが、共に犬猫にも感染し病気を起こします。 
 なお、千葉県は炭疽と破傷風の常在地でありますので、特に注意が必要です。
 以降、炭疽と破傷風について述べます。


炭疽

  炭疽とは、炭疽菌Bacillus anthracisの感染により、牛、馬、めん羊、犬、人などに敗血症をもたらす急性の感染症であり、人獣共通感染症として重要な疾病です。中でも牛、馬、めん羊、山羊などの草食動物は炭疽菌の感受性が強く、豚、犬などは比較的抵抗性であると言われています。
 また、我が国では家畜伝染病予防法で法定伝染病(牛、水牛、馬、めん羊、山羊、豚)に、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(以下、感染症法)で4類感染症に指定されており、共に炭疽を診断した獣医師、医師には届出の義務が課せられています。
 我が国での発生は、最近では平成12年に2頭、牛の炭疽が発生したのみです。しかし、諸外国ではアメリカやイギリスをはじめとしてかなりの発生があり、特に東南アジア諸国では頻発しています。

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1.病原体
 炭疽菌はグラム陽性の大型桿菌(1〜2×5〜10μm)で、空気にさらされると中心に球形の芽胞を形成します。芽胞は熱、乾燥、消毒薬などに強い抵抗性を有し、土壌中に排泄された場合、長期間(10年以上)生存するため、炭疽で斃死した動物及び疑いのある動物の死体は病性鑑定施設以外では解剖してはいけないことになっています。

2.臨床症状
 典型的な潜伏期間は3〜7日(範囲は1〜14日)で、臨床経過は甚急性から慢性の経過をとります。牛、馬などの感受性の強い動物においては、定型的な急性敗血症を呈し、何の前兆もなく、歩様蹌踉、呼吸困難、震え、虚脱、痙攣などを呈し死亡します。死亡畜では鼻腔、口腔、肛門などの天然孔から凝固不全のタール様の出血が見られます。また、感受性の強くない動物においては慢性の経過をとります。
 人の症例では、皮膚炭疽、肺炭疽、腸炭疽、髄膜炭疽の4つの病型があり、中でも皮膚炭疽が95%以上を占めます。皮膚炭疽は、皮膚の小さな傷口から感染し、局所に発赤、浮腫、水疱を形成し、次第に典型的な黒色の痂皮となります。およそ80%の患者では7日〜10日で治癒しますが、20%では感染はリンパ節及び血液へと進展し、敗血症となり致死的な経過をとります。肺炭疽は芽胞の吸入により感染し、腸炭疽は主に感染した動物の肉を食することにより感染します。いずれも致死率が高くなります。また、髄膜炭疽は、皮膚炭疽の約5%、肺炭疽の約65%に引き続いて起こり、致死率は100%と言われています。

3.感染経路
 炭疽菌は罹患動物の病巣、乳汁、糞便、尿、血液などの全身諸臓器、排泄物及びこれらに汚染された飼料、土壌、器具などから検出されます。
 感染経路は主に創傷面からの経皮感染及び経口感染です。
 人へは動物を介して感染することから、農業従事者、獣医師、動物産品処理従事者などに多いようです。

4.診断
 経過が甚急性または急性であるため診断は著しく困難ですが、突然の発熱を呈する牛で、ワクチン歴が無く、周辺農家で家畜の急死例などがある場合は本病を疑わなければならなりません。
 本病の病原診断は病巣組織や血液からの菌の分離・同定と分離した菌のガンマーファージテスト、パールテストなどの細菌学的診断が中心ですが、病性鑑定時にはアスコリーテストなどの血清学的診断も広く行われています。

5.予防・治療
 生ワクチン(無莢膜弱毒変異株:34F2株)による予防が、牛ならびに馬を対象に実施されています。また、発病が認められた場合には死体、乳汁、敷きワラ、飼育舎などの処理は家畜伝染病予防法に記述されている方法に基づき実施されます。本菌は芽胞菌であるので、その消毒は高圧蒸気滅菌、塩素剤、ヨード剤などで行われます。
 本病が生前に診断されることは少なく、治療することは事実上ほとんどありませんが、同居牛に対して、緊急予防的にペニシリン等を注射することがあります。


破傷風

 破傷風とは、破傷風菌Clostridium tetani の感染によって生産される神経毒の中枢神経系への吸着により、特異的な筋肉の痙攣及び強直を引き起こす急性の感染症です。
 本病は馬、牛、豚、めん羊、犬、猫、人などに感染する人獣共通感染症であり、感受性は馬で最も強く、次いで牛、人、めん羊、豚、犬の順で、鳥類は抵抗性を示します。
 また、我が国では家畜伝染病予防法で届出伝染病(牛、水牛、しか、馬)に、感染症法で5類感染症に指定されており、共に破傷風を診断した獣医師、医師には届出の義務が課せられています。
 我が国での発生は、動物では比較的まれで年間10頭程度が散発的に報告されている程度ですが、人では年間100人程度の患者が報告されています。

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1.病原体
 破傷風菌は特に厳しい嫌気状態を要求するグラム陽性の偏性嫌気性桿菌で、特有の太鼓ばち状の端立芽胞を形成します。多くの場合、深い創傷部は嫌気条件になりやすいため、傷口から侵入した菌はそこで増殖し、増殖末期に産出される神経毒により、筋肉の強直・痙攣等特徴的な神経症状を呈します。本菌は芽胞の状態で世界中の土壌中に広く、長期間存在するため、炭疽菌と並んで土壌病の代表的な菌種とされています。

2.臨床症状
 潜伏期間は通常2〜5日(数週間に及ぶ場合もある)、馬では眼瞼や瞬膜の痙攣、縮瞳、続いて開口困難、咀嚼・嚥下困難を呈し、牙関緊急(顎の筋肉の強直によって口が開かない状態)、耳翼佇立、鼻翼開張などの典型的な症状を発現します。病勢が進行すると全身の発汗が著しくなり、頸部筋肉の硬直、躯幹筋の痙攣が起こり、四肢の関節が屈曲不能となり開張姿勢をとり、やがて呼吸困難に陥り窒息死します。このように、毒素の血行性拡散によってまず頭部の症状が現れ、続いて呼吸器の完全麻痺が起こり死亡します。
 犬では発熱に続き、流涎、嚥下障害がみられ、顔面筋の収縮、開口障害とともに両耳は後ろに牽引されます。瞳孔は持続的に縮瞳、ときに瞬膜の突出が見られ、歩様は木馬様で刺激に対して敏感に反応します。重症例では後弓反張姿勢を呈し、呼吸不全で死亡します。
 人の場合は、通常3〜21日の潜伏期を経て特有の症状を呈します。また、その段階は次の4期に分けられています。

第1期:
 
口を開けにくくなる。食物の摂取が困難になる。首筋が張り、寝汗、歯ぎしりなど。
第2期:
 
開口障害が強くなる。顔面筋の緊張・硬直によって前額にしわ、唇は横に広がって少し開き、歯牙を露出(ひきつり笑い表情)など。
第3期:
 
生命に最も危険な時期、頸部筋肉の緊張によって頸部硬直、次第に背筋にも緊張・強直、発作的に強直性痙攣、腱反射の亢進など。
第4期:
筋の強直、腱反射の亢進は残っているものの、諸症状は次第に軽快する。

 破傷風では初期(第1期)から全身性痙攣(第3期)が始まるまでの時間をオンセットタイムと呼び、これが48時間以内の場合は予後が不良であると言われています。

3.感染経路
 感染経路は主に創傷面からの経皮感染です。蹄の傷(釘、木片などの刺創)、胎盤停滞、新生子馬の臍帯、去勢などの手術創などから感染します。土壌中の菌は長期間生存するため、汚染された地域の牧場や厩舎に飼育されている馬に発生が多く、土壌との関連から本症の発生には地域性が認められています。
 人の場合も同様で、土壌中の芽胞が創傷部位より体内に侵入し感染します。現在でも転倒事故や土いじりによる受傷部位からの感染が多いと言われています。

4.診断
 破傷風の臨床症状は特徴的であり、また症状の類似する他の疾患がないため、臨床症状から容易に診断できます。菌分離は、通常は感染部位と考えられる創傷を見いだすことは困難ですが、認められた場合には滲出液を嫌気培養します。また、同部位の組織乳剤をマウスに接種し、破傷風症状を認めた場合にはマウスから菌分離を試みます。

5.予防・治療
 日頃から動物を傷つけないために、釘や金属、木片など深い傷を作る恐れのある物を飼養環境から除去することが大事です。また、抗毒素血清による受身免疫とトキソイドを用いる能動免疫があります。馬の場合はトキソイドワクチン接種による予防が実施されています。
 発症が認められた場合には、感染初期には抗毒素血清の大量投与が行われますが、病気が進行したものでは効果はありません。また、抗生物質や筋肉の痙攣、強直の緩和に硫酸マグネシウム、クロルプロマジンなどの鎮静剤の投与が行われることもありますが予後は不良です。
 人の場合もトキソイドワクチンが用いられ、成人用として2種混合、7歳未満の小児には3種混合ワクチン(DTP)が接種されています。

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