人獣共通感染症 関連資料 |
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●エキノコックス症 |
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エキノコックス (Echinococcus) はサナダムシ(条虫)の仲間で、
本来肉食獣と他の動物(齧歯類や有蹄獣)間で感染環を形成していますが、
ヒトへ感染すると、重篤な疾病を引き起こす寄生虫です。
この幼虫はヒトや野ネズミの肝臓に寄生し、強い病原性を発揮しますが、
成虫はイヌやキツネなどの肉食獣の小腸内に寄生し、ほとんど病原性は示しません。
エキノコックスは、北半球に広く分布しています。 理論的には、終宿主(キツネ類)と
中間宿主(野ネズミ類)の密度が高く、さらに終宿主が中間宿主を捕食する頻度の多いところで
大流行することになっています。
世界における患者数は推定10万人から30万人いるとみられ、
北海道でも人の感染者がつぎつぎに発見されました。
エキノコックス症は、人の第四類感染症に分類され、
医師が診断した場合、7日以内に最寄りの保健所長を経由して都道府県知事に
届け出なければならないことに決まっています。
また、感染症法施行令の一部改正により、獣医師の届出対象疾病にエキノコックス症(犬)が
追加され、平成16年10月1日から施行されています。
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1.病原体と感染経路
エキノコックスの発育段階は虫卵、幼虫、成虫の三つの段階があります。
虫卵は感染したイヌやキツネなどの肉食獣の便とともに外界に放出され、
周囲の地面や水や植物等を汚染します。
つぎにこの虫卵は埃、食物や飲水などとともにヒトやネズミ、家畜の口に入ると、
小腸で孵化し、肝臓や肺などに移行し、多包虫(幼虫型)に発育します。
幼虫型に感染する宿主動物を中間宿主と呼びます。多包条虫の中間宿主は主に野ネズミ類です。
多包虫に感染した野ネズミ類をイヌやキツネなどの肉食獣が捕まえて食べると感染し、
寄生虫はイヌやキツネの小腸内で成虫となり、虫卵を作ります。
このように成虫型に感染する宿主動物を終宿主と呼びます。
ヒトは中間宿主となり、ヒトへの感染は虫卵の経口摂取によるもので、幼虫が感染している
中間宿主をヒトが食べてもエキノコックスには罹りません。また、ヒトからヒトへは
密接な接触があっても全く伝播しません。
一方、終宿主であるイヌやキツネに虫卵を食べさせても感染しません。
あくまで、終宿主から中間宿主へ、中間宿主から終宿主へ伝播します。
自然界では成虫は主にキツネに寄生しますが、犬や猫にも感染し、小腸粘膜に付着して寄生します。
成虫は感染後26日以降に虫卵を排泄し始めます。ただし成虫がキツネやイヌの体内で増殖すること
は全くありません。成虫の寿命は2から4ヶ月程度です
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2.症状
ヒトへの感染はキツネやイヌなどから排泄された虫卵に汚染された水、食べ物、埃などを
口から摂取した時に起こりますが、多包虫病巣の拡大は極めてゆっくりで、
初期症状が現れるまで、成人では通常10年以上かかります。(子供は経過が早い)
病気の進行につれて、多包虫が大きくなり周囲の肝臓の機能が悪くなると、
はじめ上腹部の膨満・不快感などの不定症状のみで、肝機能障害は現れませんが、
進行すると肝臓機能不全となり、腹部症状が強く、発熱・黄疸がみられます。
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3.治療
ヒトの場合、現在の最も有効な多包虫症の治療法は、外科手術による多包虫の摘出です。
早期診断された場合の術後の予後は良いのですが、診断が遅れると術後の治癒率は低くなります。
また、動物(イヌ・キツネ・ネコなど)の場合は、駆虫剤のプラジクアンテル
(ドロンタール、ドロンシットなど)が、成虫の駆除には有効です。
ただし、虫卵には無効なので注意してください。
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4.感染予防
エキノコックスの分布する地域(現在のところ北海道)においては、次の事項に気をつけましょう。
・ 井戸水・沢水を直接口にしない
・ 管理されていない生野菜、野生植物を食べない
・ 人の定期的な検査(特にハイリスクグループ)
・ キツネ、野良犬、野良猫に直接手を触れない
・ ペットであっても触ったら手を洗う
・ 動物の定期的なふん便検査、定期的な駆虫
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千葉県内への侵入を阻止し、エキノコックスの被害を出さないようにするために
1:北海道へ犬を連れて行ったら、道外に出る時に動物病院でエキノコックスの検査(ふん便検査)
駆虫を行う。また、犬のシャンプーを行う。
2:現在、北海道由来の犬を飼育している場合、その犬が北海道を出てから6ヶ月以内ならば、
動物病院で検査を行い、陽性であればただちに駆虫する。
3:6ヶ月以上経っている犬については、もう問題はない。
(再感染がなければ、もう虫卵を排泄していない。)
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