人獣共通感染症 関連資料 |
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●ツツガムシ病 |
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「つつがなくお過ごしでしょうか?」という日常的な表現が
「ツツガムシ病にかからずに無事にお過ごしですか?」から転じた物だとすると、
この病気の存在を日本人は聖徳太子の頃から知っていたようです。
また中国では西暦313年の物として、その媒介をするダニについてまで書き残されている
文献が確認されているようですので、ダニによって媒介され発疹のできる恐ろしい病気という
認識は昔からあったようです。今日でもツツガムシ病の治療されない時の死亡率は30%以下
という微妙な記載のされかたを医学書では見うけます。
ツツガムシ病の原因は、細菌とウイルスの両方の性質をあわせ持ったリケッチアと呼ばれる
グループに分類される病原体です。
この病原体の発見には日本が多大な貢献をしており病原体の学名もOrientia tsutsugamushi
と日本語から取られ、英語でもTsutsugamushi diseaseと書かれるほどです。
日本国内では1970年頃まではその発生がほとんど報告されないほど少なくなっていましたが
1975年頃より急速に増え現在では年間400~900人の患者さんが報告されています。
同じような傾向はお隣りの韓国や中国でも見られており、
昔からあった病気がまさに復活しようとしていると言えます。
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1.感染経路
ツツガムシ病の病原菌は、この菌を持ったツツガムシと呼ばれる大きさが1mmにも満たない
ダニの幼虫に吸着される事によって動物の体内に入り込みますが、体内へ病原体が移動するには
6時間ほどを必要とします。ダニ自体は1~2日間吸着し体液を吸った後、動物から離れ土の中で
昆虫の卵などを餌として成長し産卵を始めます。ツツガムシが動物に吸着し病原体を動物に運び込む
チャンスは、その一生でこの一回だけという事になります。
また、この病原体は経卵感染というめずらしい方法で世代を重ねます。
この方法ではツツガムシ病になってしまった動物に病原体を持っていないツツガムシが吸着しても
そのツツガムシが新たな媒介に関与する事ができません。
つまり病原体を持ったツツガムシから産まれたツツガムシの幼虫しかツツガムシ病を
うつす事はできないのです。
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2.症状
発熱、発疹、ダニに刺された痕跡が主要な徴候です。
特に刺された跡はその消失に2週間ほどかかりますので丁寧に探してみる事が大事です。
この図は国立感染症研究所の感染症発生動向調査週報2002年第13号からお借りしました。
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3.治療
効果があるとされている抗菌剤がいくつかあります。
しかしながら原因がまだ分からず何らかの病原体の存在が疑われるといった初期の段階で
使用される事の多い抗菌剤は効果がありませんので、どのような薬が効かなかったか
という情報も重要です。
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4.予防
ワクチンはありません。発生のピークである5月頃と11月頃はツツガムシの発生地域の
野山には立ち入らない、というのが望ましいのですが、山菜取り、キノコ狩りのシーズンですので
そうも言っていられないでしょうから、長袖・長ズボン・長靴、それから帽子の着用など
肌を極力露出しないような服装でツツガムシに刺されないよう注意してください。
また帰宅後は入浴してツツガムシに刺されていない事を確認し、変な虫を見つけるような事が
あったら丁寧に洗い流しておいてください。
後日体調を崩すような事があったら医師にこのような事情をお伝えください。
千葉県内、1995~2004年の地域別発生状況について色分けされた地図を
千葉県衛生研究所ウイルス研究室の研究員である吉住秀隆先生からご提供いただけましたので
以下に示しておきます。
色分けは、赤:80人以上、橙:60~79人、黄:40~59人、
黄緑:20~39人、水色:10~19人、紫:1~9人です。
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5.その他(参考となる事)
東北・北陸地方で夏に発生のピークがあり風土病とされ、古典型と呼ばれているツツガムシ病は、
その媒介ツツガムシであるアカツツガムシが消滅したと考えられ夏のピークは見られなくなっています。
ちなみにアカツツガムシの学名はLeptotrombidium akamushiとアカムシの名前が入るほど
日本のこの分野での活躍を示しています。
春と秋に発生のピークをみる新型ツツガムシ病は媒介ツツガムシとしてタテツツガムシと
フトゲツツガムシを持ちこのツツガムシの幼虫の出てくる秋から初冬に関東から九州を中心に、
またフトゲツツガムシは寒さに強く冬を越し春になると活動を再開するため東北・北陸では
春から初夏にも発生のピークを迎えるとされています。
ツツガムシは、人以外のネズミ、犬など哺乳類にも吸着するようですが人以外では俗に言う
ダニに食われた、と呼ばれるもの以上の問題は起こさないようです。
しかしながらツツガムシ病を運んでしまう可能性はありますので御自身の安全あるいは
公衆衛生という事からもツツガムシの移動に協力する事の無いようにお願いいたします。
具体的な方法についてはかかりつけの獣医師に御相談ください。
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