人獣共通感染症 関連資料 |
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●真菌感染症 |
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真菌とは、一般的に酵母(イースト菌等)、カビ(青カビ、コウジカビ等)、キノコの総称で
それぞれ【酵母菌】【糸状菌】【担糸菌(キノコ類)】に分けられます。
有用なものと有害なものがあり、有害真菌による病気を真菌感染症といいます。
真菌はいわゆるカビですので、その胞子は空気中、土中のあらゆる所に胞子は存在します。
しかし、健康なヒトや動物はそれらと共合していく力(抵抗力)を持っていますので、
普通は感染しません。
不潔にしていたり、抵抗力が落ちていたり、何らかの病気で弱っていると、免疫力の低下により
接触時に感染します。
感染症にかかりやすい人や動物を易感染者といい、小児、高齢者、糖尿病、免疫不全症患者、
免疫抑制、抗ガン治療患者はこのなかに入ります。
真菌感染症で代表的なものは、アスペルギルス(Aspergillus)症、カンジダ(Candida)症、
クリプトコックス(Cryptococcus)症で三大内臓真菌症と呼ばれ、皮膚真菌症では
皮膚糸状菌症、マラセチア症、スポロトリックス症、カンジダ症が有名です。
人と動物の共通感染症で問題になる真菌症は
ペットからヒト、ヒトからペットにうつる真菌症で代表は以下のものがあります。
【皮膚糸状菌症―皮膚】
【クリプトコッカス症―呼吸器、皮膚】
【スポロトリックス症】
この中の【皮膚糸状菌症】と【クリプトコッカス症】について説明します。
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【皮膚糸状菌症とは】
ヒトの場合のいわゆる「たむし」「ぜにたむし」「水虫」「爪水虫」をいいます。
【原因】
1.犬小胞子菌 Microsporum ssp.
2.白癬菌 Trichophyton ssp.
3.表皮菌 Epidermophyton ssp.
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1.感染経路
・感染動物との接触
・共用の衣類、タオル、マット、くしの使用
・免疫不全症候群等に日和見感染も自然界からまれにみられる。
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2.感染経路
【ヒトの場合】
1.頭部
いわゆる「しらくも」と呼ばれ、頭皮、毛髪に感染し、円形の境界明瞭な黄白色~灰白色の
紅斑、脱色斑を認める。掻痒感はほとんどなく、炎症症状もない。ケルスス禿瘡では、炎症、疼痛が あり、耳介後リンパ節の腫大もある。
2.体部
いわゆる「ぜにたむし」と呼ばれ、顔面、頸部、躯幹に境界明瞭なリング状発赤皮疹を発する
掻痒感はある。
【動物の場合】
頭部、頸部、四肢、四肢端、尾端、耳介端に多く見られ、体表全体にも及ぶものもある。
境界明瞭な円形な脱毛を呈し、痒みはほとんどない。
幼齢動物は多発しやすい。
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3.診断
・病変部からの直接鏡検で菌糸、分節胞子の確認
・真菌培養によりコロニーの確認(症例4)
・大分生子の形態確認(症例5)
・動物の場合 Microsporum canis にかぎりウッド灯での発色の確認で証明
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4.治療
ヒトも動物も共通である。
・外用
①抗真菌剤、イトリゾール等のイミダゾール系軟膏、クリームの塗布
②上記のシャンプー
・内服
①イトラコナゾール、ケトコナゾール等の内服
②重症はアンフォテリシンB、ミカファンギン等の注射
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【クリプトコッカス症とは?】
自然界に広く存在する土壌にいる酵母様真菌で、おもに健康な状態でこの菌を持っている鳥類が汚染源と
なって、とくに集団ハトの糞便が重大な感染源となっている。
【原因】
クリプトコッカス Cryptococcus neoformans
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1.感染経路
土壌 ⇒ 鳥体内 ⇒ 糞便 ⇒ 乾燥、空気散舞 ⇒ ヒト 肺
※好低温菌なので、高体温の鳥体内では増殖せず、排出後に増殖する。
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2.症状
・糖尿病などで免疫力の低下しているヒトが吸い込むことにより日和見感染し、肺炎症状をおこす。
・発熱、咳、痰の肺炎症状
・多くは軽症で自然治癒
・重症は髄膜炎等を起こすこともある。
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3.予防
ハトの糞便が原因なので、集団コロニーの形成を妨げる目的で、ドバトにはエサを与えない等の対策を
行う。
ハトの集団の中には入らない。
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4.治療
・イトラコナゾール等の内服
・アンフォテリシンB、ミカファギン等の注射
・多くは自然治癒
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