人獣共通感染症 関連資料 |
|
|
●ウエストナイル熱(脳炎) |
|
ウエストナイルウイルスは1937年アフリカのウガンダ(West Nile地方)で発熱した女性から
分離されました。ウイルスは鳥と蚊の間で感染環が維持され、
主に蚊を介してヒトやウマなどに感染します。
日本において感染は認められていないがヨーロッパやアメリカ・カナダ等の西半球で
1990年代中頃から発生が認められています。
北米での流行は従来と異なり、感染鳥(特にカラス)の発病や死亡率、ウマとヒトにおける流行、
重篤な脳炎患者の発生が顕著にみられます。
|
|
1.病原体
日本脳炎ウイルスやセントルイス脳炎ウイルスに近いウイルスで、節足動物を介して伝播する
アルボウイルス感染症の一つで、フラビウイルス属のウエストナイルウイルスです。
ウイルスは成熟期のメス蚊の吸血時に増幅動物である鳥類に伝播されます。
鳥類は1~4日間ウイルス血症を起こします。流行には渡り鳥の存在や感染蚊の移動の関与が
示唆されますが、成熟蚊の越冬や経卵性伝播の報告もあります。
|
|
2.臨床症状
ヒトにおける潜伏期間は3~15日で感染例の80%は症状のでない不顕性感染で、
発症した場合は多くは急性熱性疾患であり短期間(約1週間)で回復します。
一般的には3~6日間程度の発熱、頭痛、背部痛、筋肉痛、筋力低下、食欲不振がみられます。
皮膚発疹が約半数にみられリンパ節腫脹を合併します。約1%が重篤な症状として、
頭痛、高熱、方向感覚の欠如、麻痺、昏睡、ふるえ、痙攣などの髄膜炎・脳炎が見られます。
主に高齢者に見られ、致命率は重症患者の3~15%とされています。
ウマでは脳炎を発症することが多く発症ウマの40%前後が死亡します。
羊では発熱、流産、犬・豚では無症状、猿ではヒト同様発熱と脳炎が見られ、
死亡することもあります。鳥類では普通症状を出しませんが、アメリカの発症では
カラスに特に強い発病(死亡)が見られています。
|
|
3.病原診断
血清や脳脊髄液を用いてウイルス分離、ウイルス遺伝子(RNA)の検出をします。
血清反応による抗体の有意な上昇確認が必要ですが、他のフラビウイルスとの交差反応に
注意を要します。
|
|
4.治療・予防
臨床症状を呈したヒト、ウマにおける本病に対する治療法はなく、対症療法のみです。
ワクチンはウマで開発されていますがヒトではありません。日本のような未発生地域では
初期段階での迅速なウイルス検査が必要であり、感染を最小限に抑えることにつながります。
鳥類の感染の把握、特にカラスの死亡などはウイルスの活動動向を知る上で最高の指標となります。
蚊のコントロール、個人的な蚊との接触防止も重要な予防法となります。
|
|
5.感染症法による取扱い
ウエストナイル熱(脳炎を含む)は、従来は感染症の予防及び感染症の患者に対する
医療に関する法律(感染症法)に基づき、定点把握対象四類感染症の「急性脳炎」として
取り扱われてきましたが、平成14年11月1日付けで「全数届出対象四類感染症」の一つとして
施行されることとなりました。
なお、感染症法施行令の一部改正により、平成16年10月1日から
ウエストナイル熱(鳥類に属する動物)が獣医師の届出対象疾病に追加されました。
|
|
6.報告基準
診断した医師の判断により、症状や所見から疑われ、かつ、以下のいずれかの方法によって
病原体診断や血清学的診断がなされたもの。
○病原体の検出:血液や脳脊髄からのウイルス分離
○PCR法によるウイルス遺伝子の検出
○特異的なIgMの検出。特異的IgGのペア血清での有意な上昇
|
|
7.よくある質問と答え
Q:ウエストナイルウイルスは人から人へうつりますか?
A:通常直接感染はありません。母乳による感染、輸血や臓器移植による感染は否定できません。
Q:動物からヒトに感染するのですか?
A:動物から直接感染したという報告例はありません。ヒトはウエストナイル感染蚊に
刺されることにより感染します。
Q:どのような人がウエストナイル脳炎にかかりやすいのですか?
A:汚染地域においては、誰でもかかる危険性はありますが、特に高齢者は重症になりやすいと
言われています。
Q:ウエストナイルウイルスの感染を予防するにはどうしたらいいですか?
A:露出している皮膚へ蚊よけ剤の使用。戸外に出る時は、できる限り長袖長ズボンの着用。
網戸の試用。水たまりの解消。
|
|
|